エンドレス・サマー

前向きで切ないアイドルたちが大好きです。

夏の匂いがします

2008年の夏から四年ぶりに「魔王」を見ました

魔王 [DVD]

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ずっと、成瀬さんに再会する気力も思い切りもなかったんですよね。
なんですが、夏にとうとう魔王の再放送をしていたので、思い切って見返しました。そして、成瀬先生との夏が終わったので感想を書くことにします。

大野担の皆さんは思い入れが深すぎて、沢山語りたいドラマかと思いますので、お気軽にコメントやリプをください^^
感想はざっくりです。
ネタバレ大丈夫な方は続きから!

■魔王ってどんなドラマ?

■ざっくりあらすじ
 大野担が愛してやまない大野智の初の連ドラ&初主演ドラマ作品
 大野さんが演じる弁護士成瀬領斗真演じる刑事芹沢直人復讐をする過程を描いたサスペンスドラマ
 私もなんですが、「魔王」おちな大野担はかなり多いような気がしています。それくらい、成瀬領を演じる大野智は魅力的だったと思います。

■刑事・芹沢直人
 生田斗真演じる直人。直人は中学時代に犯してしまった罪を抱え、誰よりも犯罪者を憎む刑事となることで、その償いをしようとしていました。しかし、成瀬先生の復讐によって、自分の周りにいる恩人や親友、肉親たちを順番に失い、真犯人への憎しみを募らせていきます。初めの真犯人を心底に憎んでいた熱血刑事の姿と、原因が11年前の自分の罪にあると知って絶望していく様子、父親への情と確執に揺れ動く姿。
 まっすぐな芹沢が見せる絶望と許しが、本当に印象的でした。

 序盤の芹沢直人は、まるで自分の過去を置き去りにしていたように見えるのですが、実は誰よりも11年前の出来事を忘れられず、償いたいという思いを持っています。刑事という立場で一見正義のように見える芹沢実は罪を犯していて、しかし、それを忘れられない善人でもある、というちょっとずつ心情が反転していくキャラクターなんです。
 また、直人自身もある意味では父親・芹沢栄作の考える「最善」の犠牲者なんですよね。成瀬先生の復讐のきっかけでありながら、成瀬先生と一番わかりあえる人は直人、という構図もベタだけども非常に心に響きました。
 
■天使の弁護士・成瀬領
 成瀬先生は優しげな声と表情をしながらも、赤い封筒とタロットカードで殺人予告をし、直人周辺の人間をガンガン罠にはめて死なせる冷酷な復讐の鬼の顔を持っています。しかし、ヒロインのしおりやお姉さんと一緒にいる時だけは、心底優しかった真中友雄に戻ってしまいます。

 一番表の、天使の弁護士成瀬領の仮面・2番目の復讐の鬼の仮面、そして一番下にある家族思いで正義感に溢れて優しい真中友雄
 一番下にある素顔をちらっと見せられるたびに、成瀬先生が何重にも仮面を付けて生活をしなければならない切なさを感じ、その仮面が外れてしまうほど動揺してしまう瞬間に私は心動かされたのでした。



■「魔王」の魅力って?

■冷静になると突っ込みどころ満載
 今回見返して思ったのが、冷静になると11年も温めていた割には意外と復讐計画も薄くて詰めが甘いし、キャラの設定もやや緩いし、行き当たりばったりで都合の良い展開多すぎない?ということでした。
 何というか、脇はともかく、主役2人の行動の整合性もあんまり取れていない印象なんですよね。特に芹沢。
 それに、警察も甘いし後手に回りすぎだし、直人は単独行動しすぎ!
 
 とまあ、突っ込もうと思えばいくらでも突っ込みどころは満載ですし、非常に現実離れしています(笑)
 それでも、「魔王」には視聴者を世界観に没頭させてしまう魅力があります。それは、感情のリアリティーです。

■感情しか描かない潔さ
 魔王というドラマは一見、魔王の掌で転がされる刑事と、一転して刑事に追いつめられていく成瀬先生の頭脳プレイにドキドキするようなドラマに見えます。

 が、それは全く違っていて、出てくる登場人物たちの感情と行動をどれだけ説得力を持って魅せるか、人間と人間の間に生まれる感情の多様さと複雑さ、一つの強い感情が周囲と共鳴していく様子に全てを注ぎ込んだドラマなのです。成瀬領の狂気に説得力を持たせられた段階で、作り手が勝った作品でした。

 人の感情も行動も、機械みたいに必ず同じ結果が出るものでも、理性ですべて抑えられるものでもありません。気持ちは揺れ動きながらもほんのわずかな違いと衝動で様々な選択をしていく登場人物。その感情で動く人間の一瞬を見せるためのシーンなのです。

 そのため、復讐計画はずさんでも、登場人物たちが様々な感情を引き起こすきっかけや伏線、設定はこだわっていますし、セリフ選びやカメラ割、微妙なしぐさまで非常に丁寧に作られています。
 なので、一回目に復讐を果たすまでの緻密なトリックを期待し、あてが外れた方も、登場人物たちの配置と緻密な感情描写を中心に見ていただくと、この作品の凄味が伝わると思います。

 魔王に関しては、成瀬先生の復讐計画は感情表現を見せるために用意されたきっかけにすぎません。視聴者が考えるのは、「なぜ復讐計画が成功してしまうのか」であって、「復讐計画の評価」ではないのです。
 この欲張らない描き方がすごく潔いし、意外と珍しいドラマなような気がしています。

■意外と大きい大野さんの演技
 久しぶりに見返すと、成瀬領というキャラクターを作りこむうえで、ゆっくりした動作とか姿勢とか穏やかな声とかそういうベースのところは話が進むにつれて、相手によってこまかーく変えていくんですが、もう一つの感情が動く瞬間の大野さんの演技が徐々に大きくなっていくのがわかります。

 初めの方は、復讐を始めて魔王になったことに揺るがない覚悟を持っていて、人前では天使の弁護士の仮面もきちんとつけてるんです。
 ですが、後半になるにつれて復讐している自分に疑問を持ちはじめ、少しずつ追い詰められていって余裕がなくなり、ポーカーフェイスもどんどん甘くなっていきます。後半になるほど、成瀬先生の揺れ動く感情はより大きく、視聴者もより正確に読み取ることができて一気に感情移入してしまいます。

 冷酷な振りをして感受性豊かでポーカーフェイスが苦手で、復讐をしなければいけないという覚悟と、復讐を忘れ普通の生活に戻る幸せと、倫理観の中で常にぐらっぐらな成瀬先生。知的で余裕たっぷりのカッコいい復讐者かと思いきや、少しずつ垣間見える成瀬先生の弱さや脆さ、そして根本にある優しさに、どうしても惹かれていき、誰もが常識なんて投げ捨てて成瀬先生の味方になりたくなってしまうのです。ずるいキャラクターです(笑)

 感情を抑えなければいけない場面での、大野さんの細かな演技のさじ加減は本当に絶妙。また、成瀬先生が感情に翻弄された時の、感情が理性で抑えきれない演技も絶品です。大野さんの緻密で計算された芝居と、感情をのせた感性の芝居の両面があってこそ魅力的に見える「魔王」だったと思います。
 
■二面性
 善の象徴としての刑事芹沢と、悪の象徴としての魔王成瀬。一見そんな配置に見えながらも、その2人はもちろん白か黒かで語れる人ではありません。
 そして一見善良そうな登場人物たちも、大なり小なり、必ず誰にも知られたくない黒い一面を持っています。逆もまたしかり。
 絶対的な善人も悪人も存在しない、という徹底したメッセージが、魔王のいる非現実の世界を非常に現実的に感じさせていたと思います。

 そして、これは善悪だけではなく、ドラマ全体で出てくる「真実」も同様。この混沌とした現実の中で、何を信じるかも何を正しいと思うかも次のアクションも全て自分で決めるしかなく、その結果を背負うのも自分。この厳しさが「魔王」の色なんだと思います。
 逆に言うと、決してきれいでも優しくもない世界だからこそ、人と人がつながる温かさや、些細な人の心の美しさにも心を打たれるドラマでした。


■まとめ
 まずは、「感情表現」を軸に見てみてください。一気に「魔王」というドラマのカラーが変わりますし、引き込まれると思います。

 正直、万人受けする、よく出来たドラマではないと思います。負の感情を追っているし、見ていて気持ちのいい題材ではないです(笑)
 それでも、数話見てしまったら成瀬領という哀しい人が復讐をやめて幸せになる日が来ることを祈りながら、最後まで見てしまうと思います。それくらい、演技に迫力と熱量があるドラマだったと感じました。

 私の中でも一生心に残るドラマになったのは間違いありません。DVDBOXがじわじわ売れているのも納得です。
 最近大野担になったけど、暗そうだし「魔王」見るか迷う……。という人には迷わずおすすめです。
 あと、大野さんの泣きの演技が全編を通して絶品。お姉さんとの名シーンなんて大号泣しました(笑)
 成瀬先生を演じているときの声もすごく素敵ですし、可愛い女の子を抱きしめるシーンもあります。もちろん、大野さんが嫌で仕方なかったシャワーシーンもばっちり!!
 大野担ならば、内容に好き嫌いは分かれても、演技の一部だけ切り取って全編楽しめるかと思います。
 

 ざっくりですみません。エンタメとしては「鍵のかかった部屋」派ですが、「魔王」は絶対に忘れられないドラマですね。
 感想等ありましたらお待ちしています♪